会計・確定申告更新 2026.10.27読了 7分

個人事業主のiDeCo|掛金の上限と所得控除、始める前の注意点

個人事業主のiDeCoは掛金の上限が会社員より大きく、全額が所得控除になります。しくみと掛金の上限、節税の考え方、小規模企業共済との違い、注意点、始め方と確定申告での手続きを整理します。

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会社員を辞めて個人事業主になると、厚生年金から国民年金に切り替わり、将来受け取る年金が少なくなる可能性があります。老後の資金を自分で準備する方法として、iDeCo(個人型確定拠出年金)を検討している人も多いのではないでしょうか。

iDeCoは、掛金が全額所得控除になるなど税制面の優遇がある一方で、原則60歳まで引き出せない、運用の結果によって受け取る額が変わるといった特徴もあります。個人事業主は会社員より掛金の上限が大きいため、仕組みを理解したうえで額を決めることが大切です。

この記事では、個人事業主のiDeCoについて、仕組みと掛金の上限、所得控除の考え方、注意点、始め方を整理します。

iDeCoとは:自分で掛金を出して運用する年金

iDeCo(イデコ)は、個人型確定拠出年金の愛称です。自分で掛金を決めて毎月積み立て、自分で選んだ商品で運用し、原則60歳以降に年金または一時金として受け取る制度です。

主な流れは次のとおりです。

  1. iDeCoを取り扱う金融機関(運営管理機関)を選んで加入を申し込む
  2. 掛金の額を決め、毎月(または年単位で)口座から払い込む
  3. 定期預金・保険などの元本確保型の商品や、投資信託の中から運用する商品を選ぶ
  4. 原則60歳以降に、一時金・年金、またはその組み合わせで受け取る

運用の結果によって、受け取る額は払い込んだ掛金の合計を上回ることも、下回ることもあります。

個人事業主の掛金の上限

iDeCoの掛金の上限は、国民年金の被保険者の種別などによって異なります。個人事業主・フリーランスは国民年金の「第1号被保険者」にあたり、会社員(第2号被保険者)より上限が大きく設定されています。

区分 掛金の上限(2026年10月時点)
個人事業主・フリーランスなど(第1号被保険者) 月額6.8万円(国民年金基金の掛金や国民年金の付加保険料と合算した上限)
掛金の下限 月額5,000円(1,000円単位で設定)

第1号被保険者の上限は、国民年金基金の掛金や、国民年金の付加保険料と合わせた額です。例えば国民年金基金に加入している場合は、その掛金を差し引いた残りの範囲でiDeCoの掛金を決めます。国民年金基金や付加年金については、別の記事で詳しく解説します。

また、国民年金保険料を納めていることが加入の前提です。国民年金保険料の免除や納付猶予を受けている期間は、原則としてiDeCoに掛金を払い込めません。

掛金は全額が所得控除になる

iDeCoの掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引けます。小規模企業共済と同じ控除の欄で申告します。

所得控除は、所得税と住民税の計算のもとになる所得を小さくします。例えば、年間の掛金が36万円(月3万円)の場合、課税される所得が36万円小さくなります。所得税率が10%の人なら、所得税が約3.6万円(復興特別所得税を除く)、住民税(所得割の標準税率10%)が約3.6万円、合計で約7.2万円が税負担の軽減の目安です。実際の金額は、所得やほかの控除によって変わります。

iDeCoの税制上の優遇は、掛金のほかにもあります。

  • 運用益が非課税:iDeCoの口座の中で得た利息や運用益には、税金がかかりません。
  • 受け取るときの控除:一時金で受け取る場合は退職所得、年金で受け取る場合は公的年金等の雑所得として扱われ、それぞれの控除の対象になります。

iDeCoと小規模企業共済の違い

個人事業主が検討することの多い制度に、小規模企業共済があります。どちらも掛金が全額所得控除になりますが、性格は異なります。

項目 iDeCo 小規模企業共済
目的 老後の資金づくり(年金) 廃業・退任時の資金(退職金)
受け取る額 運用の結果によって変わる 掛金の額や納付月数、受け取りの理由によって決まる
引き出せる時期 原則60歳以降 廃業時や一定の年齢以上など(任意解約もできるが、期間が短いと元本を下回る)
運用 自分で商品を選んで運用する 自分で運用商品を選ぶ必要はない
貸付制度 なし あり

両方に加入することもできます。ただし、どちらも長い期間お金を固定することになるため、事業の運転資金や生活防衛資金を確保したうえで、無理のない範囲で組み合わせるのが基本です。小規模企業共済のしくみは、別の記事で詳しく解説しています。

個人事業主がiDeCoで注意したいこと

  • 原則60歳まで引き出せない:途中で資金が必要になっても、原則として引き出せません。事業の売上が不安定な時期は、掛金の額を控えめにしましょう。
  • 加入期間が短いと受け取り開始が遅くなる:60歳時点の加入期間などが一定に満たない場合は、受け取りを始められる年齢が60歳より後になります。
  • 手数料がかかる:加入時や毎月の口座管理などに手数料がかかります。金額は金融機関によって異なるため、公式サイトで確認してください。
  • 元本割れの可能性がある:投資信託で運用する場合、受け取る額が掛金の合計を下回ることがあります。
  • 国民健康保険料は下がらない:iDeCoの掛金は所得税・住民税の計算では差し引けますが、国民健康保険料の計算では差し引かれないのが一般的です。
  • 掛金は変更できる:掛金の額は年に一度など一定のルールの範囲で変更でき、払い込みを止めることもできます。止めた場合も、それまでの資産は引き出せず運用が続きます。

始め方と確定申告での手続き

個人事業主がiDeCoを始めて、確定申告で控除を受けるまでの流れは次のとおりです。

  1. 国民年金保険料を納めているか、免除などを受けていないかを確認する
  2. iDeCoを取り扱う金融機関を、手数料や運用商品の品ぞろえ、サポートで比べて選ぶ
  3. 加入の申し込み書類を提出する(オンラインで申し込める金融機関もある)
  4. 掛金の額と引き落とし口座を設定する
  5. 運用する商品と、掛金の配分を決める
  6. 例年秋ごろ以降に国民年金基金連合会から届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」を保管する
  7. 確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、1年間の掛金の額を書いて申告する

会社員時代に企業型確定拠出年金やiDeCoに加入していた人は、独立したときに資産の移換や加入者の種別の変更の手続きが必要です。手続きをしないままにすると、資産が自動的に別の機関に移されることがあるため、退職後は早めに確認しましょう。

まとめ

iDeCoは、自分で掛金を出して運用し、原則60歳以降に受け取る年金の制度です。個人事業主は会社員より掛金の上限が大きく、掛金の全額が所得控除になり、運用益も非課税になります。一方で、原則60歳まで引き出せない、手数料がかかる、元本割れの可能性があるといった注意点もあります。

次にやることは、国民年金保険料の納付状況を確認したうえで、事業や生活に必要な資金と分けて、60歳まで使わないお金の範囲で掛金の額を決めることです。金融機関を比べるときは、手数料や運用商品を公式サイトで確認してください。税金の扱いで迷う点は、税務署や税理士に確認しましょう。

※ 記事の内容は公開・更新時点の一般的な情報です。税金・制度の個別の判断は、税理士や税務署にご確認ください。サービスの料金・条件は各社の公式サイトでご確認ください。