個人事業主のふるさと納税と医療費控除|確定申告での扱いと注意点
個人事業主はふるさと納税のワンストップ特例が使えず、医療費控除とあわせて確定申告で手続きします。経費との違い、上限額や控除額の考え方、申告の流れと注意点を整理します。
PRこの記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。広告掲載ポリシー
会社員のころはワンストップ特例でふるさと納税をしていたけれど、独立したら手続きが変わると聞いた。通院が多かった年に医療費控除を受けたいけれど、事業の申告とどう一緒にすればいいのかわからない。個人事業主になると、こうした「個人の控除」の扱いで迷う場面が出てきます。
ふるさと納税も医療費控除も、事業の経費ではなく、確定申告で受ける「所得控除」です。事業の申告と同じ確定申告書の中で手続きします。
この記事では、個人事業主・フリーランスがふるさと納税と医療費控除を確定申告で扱うときの基本、計算の考え方、申告の手順と注意点を整理します。2026年分の申告(2027年に行うもの)を前提にしています。
どちらも「経費」ではなく「所得控除」
まず押さえておきたいのは、ふるさと納税の寄附も医療費も、事業の経費にはならないということです。どちらも個人としての支出であり、確定申告書の「所得から差し引かれる金額」の欄で控除を受けます。
| 項目 | ふるさと納税 | 医療費控除 |
|---|---|---|
| 控除の種類 | 寄附金控除(所得税)と、住民税の寄附金税額控除 | 医療費控除(所得控除) |
| 個人事業主の手続き | 確定申告で申告する(ワンストップ特例は使えない) | 確定申告で申告する |
| 必要な書類 | 寄附金受領証明書など | 医療費控除の明細書、医療費通知など |
| 帳簿での扱い | 事業用口座から支払った場合は事業主貸などで処理する | 同左 |
事業用の口座やカードで支払った場合も、経費にはせず、個人のお金を引き出した扱い(事業主貸)として記帳します。会計ソフトによっては、ふるさと納税や医療費の入力画面が用意されていることもあります。
ふるさと納税:個人事業主はワンストップ特例が使えない
ふるさと納税は、自治体に寄附をすると、寄附額のうち2,000円を超える部分について、一定の上限まで所得税と住民税から控除される仕組みです。
会社員がよく使う「ワンストップ特例」は、確定申告をする必要がない人が、寄附先が5自治体以内の場合に使える手続きです。個人事業主は事業所得の確定申告をするため、ワンストップ特例は使えません。また、ワンストップ特例の申請をしていても、確定申告をするとその申請は無効になるため、その年のすべての寄附を確定申告に含める必要があります。
控除上限額の考え方
自己負担2,000円で済む寄附額には上限があり、所得や家族構成、ほかの控除の額によって変わります。個人事業主の場合、次の点に注意が必要です。
- 会社員と違い源泉徴収票がないため、その年の所得を見込んで上限を考える必要がある
- 売上が同じでも、経費や青色申告特別控除によって所得が変わり、上限も変わる
- 医療費控除や小規模企業共済、iDeCoなどの控除が増えると、上限は下がる
総務省のふるさと納税ポータルサイトや、仲介サイトのシミュレーションなどで目安を確認できますが、あくまで目安です。所得の見込みが立ちにくい年は、前年の申告内容を参考に、余裕をもった金額にとどめておくと安心です。
申告に必要な書類
寄附先の自治体から届く「寄附金受領証明書」か、国税庁が認めた仲介サイトなどが発行する、1年分の寄附をまとめた証明書を使います。マイナポータル連携に対応している場合は、寄附の情報を申告書に取り込むこともできます。
医療費控除:計算のしかたと対象
医療費控除は、1年間(1月〜12月)に自分や生計を一にする家族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に受けられる控除です。控除額は、次のように計算します(上限は200万円)。
医療費控除の額 = 支払った医療費 - 保険金などで補てんされる金額 - 10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)
例えば、総所得金額等が300万円の人が、1年間に15万円の医療費を支払い、保険金などの補てんがなかった場合は、15万円-10万円=5万円が医療費控除の額の目安になります。
個人事業主は、売上から経費や青色申告特別控除を差し引いた所得で判定します。所得が200万円未満の年は、10万円に達していなくても控除を受けられる場合があります。
対象になるもの・ならないもの
- 対象になりやすいもの:病院や歯科での診療費、治療のための薬代、通院のための公共交通機関の交通費など
- 対象にならないもの:健康診断や予防のための費用(診断の結果、病気が見つかり治療した場合などを除く)、美容目的の施術、通院のための自家用車のガソリン代など
対象かどうか判断に迷うものは、国税庁のウェブサイトで確認するか、税務署に確認してください。
セルフメディケーション税制との選択
医療費控除の特例として、対象の市販薬(スイッチOTC医薬品など)の購入費をもとに控除を受ける「セルフメディケーション税制」があります。通常の医療費控除とは選択制で、どちらか一方しか受けられません。
確定申告での手続きの流れ
事業の申告とあわせて、次の流れで進めます。
- 事業の帳簿を締め、青色申告決算書または収支内訳書で事業所得を計算する
- ふるさと納税の寄附金受領証明書(または年間の寄附の証明書)をそろえる
- 医療費の領収書や医療費通知をもとに、医療費控除の明細書を作成する
- 作成コーナーや会計ソフトで、事業所得とあわせて寄附金控除・医療費控除を入力する
- 計算結果を確認し、e-Taxで送信するか書面で提出する
医療費の領収書は申告書に添付する必要はありませんが、税務署から求められたときに提示できるよう、申告期限から5年間保存します。ふるさと納税の住民税からの控除は、確定申告の内容が市区町村に連携されて反映されるため、住民税の申告を別に行う必要は原則としてありません。
個人事業主が気をつけたいポイント
最後に、個人事業主ならではの注意点をまとめます。
- 国民健康保険料は下がらない:国民健康保険料の所得割は、多くの自治体で前年の所得から基礎控除相当額を差し引いた金額をもとに計算されます。医療費控除や寄附金控除などの所得控除は、この計算では差し引かれないため、保険料を下げる効果は基本的にありません。
- 上限を超えた寄附は自己負担になる:経費が想定より多かった年や、売上が減った年は上限が下がるため、年末に寄附をする前に所得の見込みを確認しましょう。
- 寄附の年は12月31日で区切られる:その年の控除に含めたい寄附は、年内に手続きと決済を済ませます。決済の方法によっては寄附日の扱いが異なることがあるため、仲介サイトなどの案内を確認してください。
- 家族の医療費はまとめられる:生計を一にする家族のために支払った医療費は、実際に支払った人がまとめて申告できます。家族の誰が支払ったかの扱いなどで迷う場合は、税務署や税理士に確認してください。
まとめ
個人事業主にとって、ふるさと納税と医療費控除はどちらも事業の経費ではなく、確定申告で受ける所得控除です。ふるさと納税はワンストップ特例が使えないため、その年の寄附をすべて確定申告に含めます。医療費控除は、支払った医療費から補てん分と10万円(所得200万円未満なら所得の5%)を差し引いて計算します。
次にやることは、今年の所得の見込みを出してからふるさと納税の寄附額を決めることと、医療費の領収書や医療費通知を1か所にまとめておくことです。申告の時期には、事業の申告とあわせて控除を入力しましょう。
※ 記事の内容は公開・更新時点の一般的な情報です。税金・制度の個別の判断は、税理士や税務署にご確認ください。サービスの料金・条件は各社の公式サイトでご確認ください。