開業・独立更新 2026.10.27読了 7分

フリーランス新法とは?取引条件の明示・支払期日と契約の基本

2024年11月に施行されたフリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の対象と、発注者に課される主な義務を整理します。取引条件の明示や60日以内の支払期日など、契約で確認したいポイントも解説します。

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「発注書をもらわないまま作業が始まった」「納品したのに支払日がはっきりしない」。フリーランスとして仕事を受けていると、こうした取引条件のあいまいさに不安を感じることがあるのではないでしょうか。

2024年11月1日に、フリーランスが安心して働けるようにするための法律、いわゆる「フリーランス新法」が施行されました。発注する事業者に、取引条件を明示することや、報酬の支払期日を定めることなどの義務が課されています。

この記事では、フリーランス新法の対象となる人と取引、発注者に課される主な義務、受ける側として契約で確認したいポイントを、確実な範囲で整理します。

フリーランス新法とは

フリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、「フリーランス・事業者間取引適正化等法」とも呼ばれます。フリーランスと発注事業者の間の取引を適正にすることと、フリーランスの就業環境を整えることを目的とした法律です。

法律の内容は、大きく2つに分かれます。

  • 取引の適正化:取引条件の明示、報酬の支払期日、発注者の禁止行為など。公正取引委員会と中小企業庁が担当します。
  • 就業環境の整備:募集情報の正確な表示、育児・介護などへの配慮、ハラスメント対策、契約の中途解除の予告など。厚生労働省が担当します。

対象になる人と取引

この法律で守られる「フリーランス」は、法律上「特定受託事業者」と呼ばれ、業務委託を受ける事業者のうち、従業員を使用していない人を指します。

  • 従業員を雇っていない個人事業主
  • 代表者1人だけで、ほかに役員や従業員がいない法人

対象になるのは、事業者からの「業務委託」です。例えばWebサイトの制作、記事の執筆、デザイン、システム開発などを、事業者から依頼されて行う取引が該当します。一般の消費者から直接仕事を受ける取引は対象外です。

発注する側の義務の範囲は、発注者が従業員を使用しているかどうかで変わります。従業員を使用している発注者には、取引の期間などの条件に応じて、この記事で紹介する義務がかかります。一方、従業員を使用していないフリーランス同士の取引でも、発注者には「取引条件の明示」の義務がかかります。つまり、自分がほかのフリーランスに仕事を外注するときにも、この法律が関係します。

発注者に課される主な義務

発注者に課される主な義務を、早見表にまとめます。

義務 主な内容 対象となる取引の目安
取引条件の明示 業務の内容、報酬の額、支払期日などを、書面またはメールなどの電磁的方法で明示する すべての業務委託(フリーランス同士の取引を含む)
報酬の支払期日の設定 成果物などを受け取った日から60日以内の、できるだけ短い期間内で支払期日を定めて支払う 従業員を使用する発注者からの業務委託
禁止行為 受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用の強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しの7つ 従業員を使用する発注者からの、一定期間(1か月以上)の業務委託
募集情報の的確な表示 広告などで募集するときに、虚偽や誤解を生む表示をせず、正確で最新の内容にする 従業員を使用する発注者による募集
育児・介護などへの配慮 フリーランスからの申し出に応じて、業務と育児・介護などを両立できるよう配慮する 従業員を使用する発注者。6か月以上の業務委託では義務、それ以外は努力義務
ハラスメント対策 ハラスメントを防ぐための相談体制の整備などの措置を講じる 従業員を使用する発注者からの業務委託
中途解除などの事前予告 契約を解除したり更新しなかったりする場合、原則として30日前までに予告する。求めがあれば理由を開示する 従業員を使用する発注者からの、6か月以上の業務委託

例外や細かい条件があるため、表はあくまで目安としてください。例えば支払期日については、発注者が別の事業者から受けた仕事をフリーランスに再委託する場合など、別の定めがあります。

取引条件の明示で示される主な事項

取引条件の明示では、例えば次のような事項を示すことになっています。受注するときに、これらがそろっているかを確認する目安になります。

  • 発注者とフリーランスの名称
  • 業務委託をした日
  • 給付の内容(何を作る・何をするか)
  • 給付を受領する日、または役務の提供を受ける日(納期)
  • 給付を受領する場所、または役務の提供を受ける場所
  • 検査をする場合は、検査を完了する日
  • 報酬の額と支払期日

受ける側として確認したい契約の基本

フリーランス新法は発注者に義務を課す法律ですが、受ける側も契約の内容を自分で確認しておくことが大切です。法律で決まっていない細かい部分は、当事者同士の取り決めによるからです。仕事を受ける前に、次の項目を確認しましょう。

  • 業務の範囲:どこまでが今回の仕事か。含まれない作業は何か
  • 納期と納品の方法:いつ、何を、どの形式で納品するか
  • 検収:納品物の確認の方法と期間。確認が終わらないまま放置されないか
  • 修正の範囲と回数:何回まで、どんな修正が報酬に含まれるか
  • 報酬の額と支払期日:税込みか税抜きか、源泉徴収の有無、振込手数料の負担
  • 追加作業の扱い:範囲外の依頼があったときに、追加の見積もりをすること
  • 権利の扱い:成果物の著作権がどちらに帰属するか、実績として公開できるか
  • 秘密保持と、契約の解除:守秘の範囲と期間、途中で終了するときの精算方法

発注者から条件が示されない場合は、メールで「業務内容、報酬の額、支払期日、納期を確認させてください」と依頼し、返信を記録として残しておくと安心です。見積書の段階で条件を書いておく方法は、別の記事で詳しく解説します。

自分が外注するときも確認する

仕事が増えて、デザインやコーディングの一部をほかのフリーランスに外注することもあるでしょう。前に触れたとおり、従業員を使用していない自分が発注する場合でも、取引条件の明示の義務はかかります。外注するときは、業務の内容、報酬の額、支払期日、納期などをメールや発注書で相手に示し、記録を残しておきましょう。人を雇うようになると、支払期日の設定などほかの義務もかかるようになる点にも注意が必要です。

困ったときの相談先

取引で困ったときは、ひとりで抱え込まずに相談窓口を利用できます。

  1. まず記録を整理する:発注のメール、取引条件の明示、納品の記録、やり取りの履歴をまとめます。
  2. 相談窓口に相談する:フリーランスと発注者の間のトラブルについて、弁護士に相談できる「フリーランス・トラブル110番」という窓口が、厚生労働省の委託事業として設けられています。
  3. 行政機関に申し出る:法律に違反する行為があると考えられる場合は、取引に関することは公正取引委員会や中小企業庁、就業環境に関することは厚生労働省(都道府県労働局)に申し出ることができます。

相談窓口の名称や受付方法は変わることがあるため、利用するときは各機関の公式サイトで確認してください。入金が遅れたときの具体的な対応手順は、別の記事で詳しく解説します。

まとめ

フリーランス新法は、従業員を使用していないフリーランスへの業務委託について、発注者に取引条件の明示や支払期日の設定などの義務を課す法律です。受ける側にとっては、条件があいまいなまま仕事を始めないための後ろ盾になります。

次にやることは、次の3つです。

  1. 今の取引で、業務内容・報酬の額・支払期日・納期が書面やメールで示されているか確認する
  2. この記事の確認項目をもとに、受注前に確認する自分用のチェックリストを作る
  3. 公正取引委員会・厚生労働省の公式情報と相談窓口の連絡先を、すぐ見られるように控えておく

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