AIで仕事効率化更新 2026.10.27読了 7分

クライアントワークでAIを使うときの合意と契約|確認項目と伝え方の例

受託の仕事で生成AIを使うときに、取引先と事前に確認しておきたい項目をまとめました。秘密情報の扱い、納品物の権利、品質の責任の考え方と、相談メールや確認リストを作るプロンプト例を紹介します。

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生成AIを使えば、文章の下書きやデザイン案、コードの作成などをすばやく進められます。一方で、取引先から受けた仕事にAIを使うときは、「取引先がAIの利用を認めているか」「預かった情報をAIに入力してよいか」といった点を確認しておかないと、後でトラブルになるおそれがあります。

AIの利用についての考え方は、会社や業界によってさまざまです。積極的に使ってほしい取引先もあれば、社内の決まりで外部のAIへの入力を禁じている取引先もあります。大切なのは、自分の判断だけで進めず、事前にすり合わせておくことです。

この記事では、クライアントワークでAIを使う前に確認したい項目、契約書で見ておきたい箇所、取引先への伝え方とプロンプト例を紹介します。契約の内容によって判断が変わるため、個別のケースは弁護士などの専門家に確認してください。

なぜ事前の合意が必要なのか

クライアントワークでAIを使うときに問題になりやすいのは、主に次の3つです。

  • 秘密情報の扱い:取引先から預かった資料や未公開の情報をAIサービスに入力すると、秘密保持の約束に反する可能性がある
  • 納品物の権利:AIで作った部分は著作権が発生しない可能性があり、「著作権を譲渡する」という契約の前提と合わないことがある
  • 品質と責任:AIの出力に誤りや他人の作品に似た部分が含まれていた場合、納品した側の責任が問われる可能性がある

いずれも、取引先の期待と自分の作り方にずれがあると起こる問題です。AIを使うこと自体が悪いのではなく、使い方を共有していないことがトラブルの原因になります。

取引先と確認しておきたい項目

仕事を受ける前、または作業を始める前に、次の項目を確認しておきましょう。

確認項目 確認する内容の例
AI利用の可否 この案件でAIを使ってよいか、社内の利用ルールがあるか
使う範囲 下書き・アイデア出しだけか、納品物の一部に生成物を含めてよいか
入力してよい情報 預かった資料をAIに入力してよいか、伏せるべき情報は何か
使うサービス 指定や禁止のサービスがあるか、データの扱いの条件があるか
納品物の権利 著作権の譲渡や利用許諾の範囲、AI生成部分の扱い
確認と責任 事実確認や類似性の確認を誰がどこまで行うか
開示 AIを使ったことを納品時に伝える必要があるか

口頭で確認した内容も、メールなど記録に残る形で送っておくと安心です。後から担当者が変わっても、合意した内容を確かめられます。

契約書・秘密保持契約で見ておきたい箇所

業務委託契約書や秘密保持契約書(NDA)には、AIについて直接書かれていなくても、AIの利用に関係する条項が含まれていることがあります。次の箇所を読み返してみましょう。

  1. 秘密情報の定義と取り扱い:どの情報が秘密情報にあたり、第三者への開示がどう制限されているか
  2. 再委託の制限:業務の一部を外部に任せることが制限されていないか
  3. 知的財産権の帰属:納品物の著作権を誰が持つか、譲渡や利用許諾の範囲はどうなっているか
  4. 第三者の権利を侵害しないことの保証:侵害があった場合の責任の範囲
  5. AIの利用に関する条項:最近の契約書には、AIの利用を明示的に扱う条項が入っていることもある

外部のAIサービスへの入力が、秘密情報の「第三者への開示」にあたるかどうかは、契約の文言やサービスの条件によって考え方が分かれる可能性があります。自分で判断がつかないときは、取引先に確認するか、弁護士などの専門家に相談してください。

なお、フリーランスと発注者の取引には、いわゆるフリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)のルールも関係します。契約の基本は別の記事で詳しく解説します。

取引先への伝え方とプロンプト例

AIの利用について確認するときは、「何に使うのか」「情報をどう守るのか」「品質をどう確認するのか」をセットで伝えると、取引先も判断しやすくなります。メールの下書きや確認リストの作成には、AIを使えます。

プロンプト例:AI利用の相談メール

Webライターとして、取引先に記事制作でのAIの利用について相談するメールを書いてください。伝えたいのは、(1) 構成案と下書きの作成にAIを使いたいこと、(2) 取引先から預かった未公開の情報はAIに入力しないこと、(3) 事実確認と最終的な執筆は自分が行うこと、(4) 利用を望まない場合はAIを使わずに対応すること、の4点です。丁寧で簡潔なトーンで、400字以内にしてください。

プロンプト例:案件ごとの確認リスト

受託のデザイン案件で生成AIを使う前に、取引先と確認すべき項目をチェックリストにしてください。秘密情報、使ってよい範囲、納品物の権利、品質の確認、AIを使ったことの開示の観点を含めてください。

プロンプト例:合意内容の記録

次の打ち合わせメモから、AIの利用について取引先と合意した内容を抜き出し、確認のために送るメールの本文にまとめてください。メモに書かれていないことは追加しないでください。(ここに取引先名を伏せたメモを貼り付ける)

プロンプト例:見積書に添える一文

見積書の備考欄に、AIの利用方針を伝える一文を入れたいです。「構成案や下書きにAIを使う場合があること」「預かった秘密情報は入力しないこと」「ご希望があればAIを使わずに対応すること」を、100字以内で丁寧に3案書いてください。

AIで作った文面は、送る前に必ず自分で読み直し、事実と違う約束や、守れない約束が書かれていないかを確認しましょう。

合意したあとに守りたいこと

取引先と合意したら、その内容を作業の中で守ることが信頼につながります。次の点を習慣にしましょう。

  • 案件ごとに、合意したAIの利用範囲をメモにして作業フォルダに入れておく
  • 入力してはいけない情報を、作業前に確認する
  • AIの出力は、事実関係・表現・他人の作品との類似の観点で自分が確認する
  • どの工程でAIを使ったかを記録し、聞かれたら説明できるようにする
  • 取引先のルールが変わった場合に備え、継続案件では定期的に確認する

AIの利用を断られた場合

取引先からAIを使わないでほしいと言われた場合は、その案件ではAIを使わずに対応するのが基本です。作業時間が増えて見積もりに影響しそうなときは、その点も早めに伝えて相談しましょう。AIの利用を前提にした金額で受けていた場合は、条件の見直しが必要になることもあります。断られたこと自体を不満に思うのではなく、取引先が気にしている点を聞き、次の提案に生かす姿勢が大切です。

まとめ

クライアントワークでAIを使うときは、秘密情報の扱い、納品物の権利、品質と責任の3点について、取引先と事前にすり合わせておくことが大切です。契約書や秘密保持契約の条項も読み返し、判断に迷うものは取引先や専門家に確認しましょう。

まずは今進めている案件の契約書を開き、この記事の「契約書で見ておきたい箇所」を確認してみてください。そのうえで、「AI利用の相談メール」のプロンプトで文面を下書きし、自分の言葉に直して取引先に送ってみましょう。

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